京都会館の南こうせつ

9/23の「吉田拓郎 & かぐや姫 in つま恋2006」。1975年に行われた同メンバーによる「コンサート イン つま恋 1975」から31年、再び同じ地でライブが行われた。NHKハイビジョンチャンネルで生中継していたのでリアルタイム+録画で観た。

昔とは時代も年齢も違うのでのんびりムードだったが、拓郎もさることながら、かぐや姫が3人そろったステージが久しぶりに観られてよかった。長丁場だったので、ファーストアルバム「はじめまして」に入っている曲など、マイナーなのもやってくれたし。10/29には、大相撲中継のため放送されなかった部分を含めた総集編が4時間にわたって放送されるらしい。それも併せて、しばらくは何度も観て楽しむことになりそうである。

私はかぐや姫のライブを観に行ったことはないが、南こうせつのライブに行ったことは2度ある。そのうち1度は京都会館で1人で見た。今からもう20年近く前のことになる。その時のことを書く。

京都会館の時の1曲目は「マキシーのために」だった。前述の「はじめまして」に入っている曲である。これには意表を突かれた。他の観客も「1曲目にこれを持ってくるとは」という反応だった。こうせつのことだから意表を突くねらいがあったのかもしれない。

こうせつのライブは、曲もさることながらMC(曲の間のしゃべり)がおもしろいので楽しい。この日も軽妙なしゃべりで笑わせてくれた。

京都でこうせつといえば「加茂の流れに」。これも「はじめまして」に入っている名曲である。この曲が聴けるのかなと期待していたが、一向にやろうとしない。逆にMCで「京都といえばこの曲だよね」とか言いながらイントロをギターで弾いたりするが、それだけ。なぜか演目としてちゃんとやってはくれない。「中途半端なことをするなあ」と思いながら観ていた。

そうこうしているうちにライブは盛り上がり、アンコールも2回。いいコンサートだった。こうせつが去ったあと会場のライトがつき、BGMが流れて「本日の公演は終了しました」とアナウンスが入る。「帰ってください」という合図である。「終わったな」と思ったのだが、盛り上がった勢いでみんな帰らず、明るくなった会場で3回目のアンコールの拍手を続けていた。「終わりの合図があったのだからもうダメだろう」とは思ったが、「ひょっとしたらこの盛り上がりに応えてまた出てきてくれるのではないか」という淡い期待も抱いていた。

それでもあまりに長いので手をたたき続けるのにうんざりしだしたころ、突然BGMが止まってライトが消えた。拍手が止む。ギターを持ってこうせつが登場した。そして何も言わずにイントロを弾き始めた。「加茂の流れに」である。会場は水を打ったように静かになった。

♪やさしい雨の 祇園町 加茂の流れに映る あなたの姿

2階席にいた私には、全員が息をのんで聴いているのがわかった。静まりかえった会場にこうせつの歌が響きわたる。ギター1本で最後まで歌い終えると、こうせつはぶっきらぼうに「どうもありがとう」とだけ言って去って行った。場内割れんばかりの拍手。

これは予定の演出だったのかもしれないが、あの、会場全体が一体となって曲に聴き入る感覚は今でも忘れられない。2階席でよかった。今までに行ったコンサートの中でも最も心に残るシーンである。