将棋「次の一手」読本

将棋「次の一手」読本 (別冊宝島 (1191))

将棋「次の一手」読本 (別冊宝島 (1191))

将棋王手飛車読本」「将棋これも一局読本」に続く、別冊宝島の将棋特集の本。棋士へのインタビュー、アンケート、その他棋士への取材記事などで構成されている。

いやーおもしろかった。前の2冊もよかったが、この本は出色の出来だと思う。

昔、佐藤康光八段(当時)が谷川浩司名人から名人を奪取した時の終局時の映像(谷川ファンの私には屈辱のシーンである)をビデオで見ていたら、妻に「(佐藤は)なんでガッツポーズしないの?」と聞かれた。夢にまで見たはずの名人を獲ったというのに首をかしげたりして少しもうれしそうな顔をしないというのは、スポーツの世界などと比べると確かに変わっている。そこに奥ゆかしい日本文化といったものもあるのだが。

そんなこともあって、棋士へのインタビューや棋士の書いたものを読む時「どこまで本音を言って(書いて)くれるか」ということに興味を持ってしまう。谷川九段は書きものでは結構腹を割って書いているが、トークでは奥ゆかしい。そして羽生・森内・佐藤といった羽生世代の棋士は、思っていることがあまり活字になって伝わっていない印象があった。

対してこの本の森内名人や佐藤棋聖へのインタビューでは、いつもより腹を割って話してくれている印象がある。そして先崎八段へのインタビューがあったのがうれしかった。彼はいろんなところにエッセイを書いていて、その文章のうまさは棋界一だと思うのだが、案外その本音はわからない。本音というのは主に「羽生・佐藤・森内に勝てない現状をどう思っているのか」である。そこのところをズバズバ聞いてくれている。

渡辺竜王将棋世界の連載や「渡辺明ブログ」と同様、いつもながらソツがないなあと感心。若手の人たちは言いたいことをどんどん言ってほしいものである。

その他、今将棋界で一番ホットな話題である瀬川アマのプロ試験についてもいいタイミングで採り上げられているし、女流若手3人衆のガッツも感じとることができる。大平四段の記事は「大平の本音。」と似たような感じかな? 飽きさせない内容がギュッと詰まった本である。