色覚異常(2) 伴性遺伝

いろいろなところに書かれていることであるが、まずは色覚の遺伝について。色覚は伴性遺伝と呼ばれる遺伝のしかたをする。

人間の遺伝情報は23対の染色体ペア(各ペアの片方を父親、片方を母親からもらう)の上に乗っており、そのうちの1対の性染色体がXYならその人は男性に、XXなら女性になる。子供の性別は父親のXYのうちどちらをもらうかによって決まる。Xをもらえば女性に、Yをもらえば男性になる。

色覚を決める遺伝子はこの性染色体に同居している。このように性別を決めるのと同じ染色体ペアで運ばれる遺伝を伴性遺伝という。

そしてここがポイントなのだが、色覚を決める遺伝子はX染色体のみにあり、Y染色体にはない。したがって男性の場合はXYのXの方にどんな色覚遺伝子が乗っているかのみによって色覚が決まる。女性の場合はXXの両方に色覚の情報があるが、片方でも色覚正常の遺伝子が乗っていればその人の色覚は正常になる。XXの両方が色覚異常のときのみその人は色覚異常になる(= 色覚正常が遺伝的に優性、色覚異常は劣性)。

X染色体のうち色覚正常の遺伝子を持つものをX、色覚異常の遺伝子を持つものをX'と書くと、以下の組み合わせが存在する。

保因者というのは女性にのみ存在する。色覚が正常な女性が保因者かどうかは色覚検査をするだけではわからない。

男性の場合は片方がX'になっているだけで色覚異常になるのに対し、女性は両方ともX'でないと本人の色覚は正常になるので、色覚異常者は圧倒的に男性に多い。ただし女性の2つのXのうち片方がX'だと保因者になるため、女性の保因者の割合は男性の色覚異常者より高い。日本人の中のこれらの割合はよく「男性で20人に1人、女性で500人に1人、女性の保因者は10人に1人」と言われるが、きちんを調査したらしき値の載っているページを見つけた。

このようなX連鎖劣性遺伝としてよく知られているのが色覚異常(color blindness)である。人種差があり、男性中の頻度は、一番低いのが北米のアメリカ・インデイアン1.1%であり、エスキモー2.5%、日本人4.4%、韓国人5.5%、メラネシア人4.6%、イギリス人6.7%、フランス人9%、ロシア人9.2%と報告されている。女性の色覚異常の頻度は男性の頻度を二乗した値である(日本人の女性では約0.02%)。

愛育ねっと2004年11月解説コーナー: 子は親にどこまで似るか

(最後の「日本人の女性では約0.02%」というのは「約0.2%」の間違いだと思う)

調査のしかたやどこまでを色覚異常とするかによって割合は変わると思うが、ここに書かれている通りだとすると、男性の色覚異常者が4.4%ということから日本人のX染色体の4.4%に色覚異常の遺伝子があると想定できる。女性の色覚異常者はその2乗で0.19%、女性の正常者(保因者でもない)は(100-4.4)%の2乗で91.4%、保因者が残りの8.4%ということになる。

これからすると日本人は男性の23人に1人、女性の520人に1人が色覚異常で、保因者は女性の12人に1人である。フランス、ロシアなどの国では色覚異常者も保因者ももっと多いことになる。
さて、上の書き方でいうと私の性染色体はX'Yである。それがわかったのは6歳の時だった。

(つづく)